電子書籍のこと

 電子書籍は現代における最も偉大な発明の一つであることに、近ごろ気がついた。書籍内の検索機能。指定した範囲に関するインターネットでの検索機能。覚書の追加。ハイライトの追加。劣化したり破損したりすることがない。等々、等々。とりわけ外国語の書籍などは単語検索によく助けられている。

 ところが自分は、電子書籍で読もうとすると途中ですぐに飽きてしまう。紙書籍を手に取って頁を捲るような身体性をともなっていなければ、虚無感めいたものを感じてしまうのかも知れない。

 なので基本的に、電子書籍を購入するのは、外国語の書籍と、自分にとって聖典めいた位置づけの書を、紙書籍に加えて買う、といった場合に限られる。電子書籍の形式で読み進めるのは苦手だが、自分の好きな一節を反芻するにおいては実に好ましい。ユイスマンスの『さかしま』だとか、サドの作品群は、浩瀚な単行本と小さな文庫本に加えて電子書籍をもっている。以前は常に愛読書としてサドの『悪徳の栄え』を携帯していた時期もあったのだが、いまは外だとスマートフォンだとかノートパソコンだとかで時折開くにとどめている。お陰で変なリスクが軽減されている。