2024-02-01から1ヶ月間の記事一覧

オスカー・ワイルドのこと

オスカー・ワイルドは、自分が卒業論文で扱った作家だ。彼による長編小説『ドリアン・グレイの肖像』を、ユイスマンスの『さかしま』を中心に関連するフランス文学と絡めて論ずる、といった内容である。改めて出来を省みれば、反省点もあり稚拙な仕上りであ…

ボードレール覚書

自分はボードレールを、象徴派などの側面において扱うことが主なので、知識にいささか片寄りがあるように思われた。なので、ボードレールに関する研究書をいくつか繙いてみて、把握しておきたいと思ったことを書きとめておく。 ボードレールは、1863年「フィ…

人形を愛する或る男の独り言

僕は人形を愛している。純粋に、人間よりも人形のほうがよほど美しいからだ。純粋に至高の美を探求するというような、審美的な価値観を抱いていれば、そうなるのが当然であろうと思う。 人間の始まりについて、「糞便汚濁のなかより生まる」というように聖ア…

教養主義ならぬ「教育主義」に関する独り言

近ごろ、に限った話なのかは知らないけど、僕の周囲で、学校の教科書に載っている事柄を、自分が一大知識人であるかのように、したり顔をして引用する人々を度々見かける。シューベルトの魔王だとか、ヘッセの少年の日の思い出の一節だとか、まあ、挙げれば…

20世紀の傑作ポルノ文学『イギリス人』のこと

先日、『閉ざされた城の中で語る英吉利人』(奢霸都館)が手元に届いた。幻想文学の大家として知られるフランスの作家たるアンドレ・ピエール・ド・マンディアルグ作。1953年初版発表。原題はL'Anglais décrit dans le château fermé。元々澁澤龍彦訳の『城の…

自分のフランス語学習のこと

近ごろ、語学書だとか単語帳の類をつかったフランス語の勉強に精を出していた。フランス語は元々、偶に基本的な単語を含めて辞書を引きながらユイスマンスとかボードレールとか自分の好きなフランス文学を読む、といった次第であった。これはこれで、フラン…

サド文学Tier表

サドのこと サド文学Tier表 サドのこと 君の最も好きな作家は誰であるか、と訊ねられたとき、私は迷いなく、サド公爵と答えたいであろう。答えるのではなく答えたい、と申したのは、そのような宣言が許されるかは、その場の状況だとか、空気感だとかによると…

ロリコン小説『ペピの体験』のこと

少女を扱った小説というと、思い当るものは何であろうか。ロリータ・コンプレックスの由来ともなった、ナボコフによる『ロリータ』、ヌードも含めた少女の写真撮影を趣味としていたルイス・キャロルの『アリス』シリーズ、日本文学だと、古くは紫式部作の『…

いかなる者も自殺する権利をもつ

いかなる者にも、己の苦痛を取り除き幸福を追求する自由が与えられるべきである。自分の人生が生きるに値しないならば、その嘆かわしい徒刑から釈放される権利があってしかるべきである。 人生の決定権は、当人ただひとりが握っているべきである。それについ…

蚤が主人公の珍書『蚤の自叙伝』を読んで

『蚤の自叙伝』はいわくつきの珍書だ。一匹の蚤を視点に、上流階級の人間における好色的な生活模様を皮肉交じりに語るイギリスの小説である。1976年にポルノ映画化もされている。富士見ロマン文庫の翻訳が古書店に出回るのを虎視眈々と待っていたのだが、一…

電子書籍のこと

電子書籍は現代における最も偉大な発明の一つであることに、近ごろ気がついた。書籍内の検索機能。指定した範囲に関するインターネットでの検索機能。覚書の追加。ハイライトの追加。劣化したり破損したりすることがない。等々、等々。とりわけ外国語の書籍…

ボードレールのアフォリズム

「女がわれわれと異る度合に比例して、われわれは女たちを愛する。頭の良い女たちを愛することは男色者の快楽だ。同様にして、獣姦は男色を排除する。」(阿部良雄訳) ボードレールによるアフォリズム集『火箭』の一節である。いかにもはっとさせられる記述が…