いかなる者も自殺する権利をもつ

 いかなる者にも、己の苦痛を取り除き幸福を追求する自由が与えられるべきである。自分の人生が生きるに値しないならば、その嘆かわしい徒刑から釈放される権利があってしかるべきである。

 人生の決定権は、当人ただひとりが握っているべきである。それについて、外野が口出しをするべきではない。他人の人生を支配しようする行為は、悪徳に分類すべき傲慢である。

 自殺が禁忌とされ所以は、社会にとって一体の家畜が減るのが不都合であるためだ。社会ダーウィニズムの弊害である。

 死にたがっている人間を生かすことは、生きたがっている人間を殺すことと同じくらい残虐非道な行いである。他人の自殺を阻止せんとする人間は、首切役人と同じくらいの覚悟を持たねばならぬ。

 生きているだけで偉い、と言われるが、自殺はさらに偉大である。生きることは惰性によって為されるが、自殺は努力によって達成されるからである。望まない生は死への敗北だが、望まれた死は生への勝利宣言である。

 

ドーミエ《最後の水浴!》、1840年