私の大学院入試

 自分は今年、大学院の2月入試を受験したのだが、先日、合否が発表された。晴れて合格であった。自分は現在、上智大学の文学部英文学科の4年生なのだが、受験した大学院は、大学も専攻も変わらず、上智大学院文学部英米文学専攻だ。

 院進を決断したのは、去年の11/28である。2月入試の締切前日だ。何故かくも遅くなったのかと言えば、文学は好きだが自分に研究は不向きかしらとか、仏文専攻のほうに進んだほうがよいのではなかろうかとか、そろそろ進路を考えねばなるまいなとか、無職でよいかとか、首吊自殺しようとか、入水自殺しようとか、様々考えていたら、気付けばこの時期だったというわけだ。志したきっかけとして、ある程度自由に、自分で主題を選択できる卒業論文の存在が大きかった。卒業論文で扱った周辺のことをさらに深めたいと考えた。

 決断時点で、入試本番まで既に残されているのは2ヶ月程度。卒業論文は概ね書き終えていたが、1月はアルバイトがいささか多忙であった。塾講師だったので、受験期にシフトが増え、8時間出勤とかになることもあった。

 統計を見るに、内部受験者もそれなりに落ちている。人生最大級に勉強し、短い期間であったが、最善は尽くした。勉強の方法は何度か変えて、試行錯誤を極めはしたが。一応分野別に、主に勉強したことを書いておく。他分野の大学院入試に関連することもあるかもしれないし、無いかもしれない。なおフランス語については過去の記事を参照されたい。

 大まかに、出題分野は文学史と外国語に分けられる。文学史について先に述べるが、文学研究に関わる基礎的な知識と、選択問題でもう一つ専門分野を選択するという形式となっている。自分は、ロマン主義の時代以降のイギリス文学を選択した。

 後者の選択問題について、やったこととしては、学部一、二年生が受講するような文学史の講義における参考書として、よく挙げられる『イギリス文学入門』(三修社)なる本に載っている、該当範囲の作家やその主要な作品に関する研究書をそれぞれ最低一冊、一通り読むというものだ。多分90人くらいだと思う。そして、各作家の作品について、いかなる研究がなされているかを一通り説明できるようにし、人前で説明する機会を設けるなどした。これにより、自分にとって縦の繋がりが大分明瞭になった。どれほど試験に繋がっているかはさておき、頗る糧になった。それと、更に多くの作品をカバーしておくべきであったとも悔いている。

 思えば、自分はみずから作品を読むことはあっても、研究書は期末などにレポートを書くときくらいしか読んでいないのであった。カスである。己を恥じた。

 それに加えて、入試の一週間前くらいになって過去問に目を通したところ、英語の文学用語に関する説明問題が頻出していた。なのでそれに合わせ、5日前くらいから『文学要語辞典 改訂増補版』(研究社)を始めた。もっと早く始めておくべきであったと思う。4周くらい読んだが、対策において大いに有効であった。やはり過去問は早めに目を通しておくべきだ。

 なお全員選択のほうは、詩の韻律規則と、ギリシャ神話や聖書といった西洋文学の基盤となる知識が問われる。これは出題される文献が指定されていて、先の事柄に関わる用語を百科事典的にまとめた英語の参考書がある。なのでそれを暗記すればよろしいという寸法だ。

 しかし、ギリシャ神話だとか聖書だとかの輪郭を知らずして、英語で用語とその定義のみ覚えるというのも、いささか無理がある。自分は、この手の暗記が大の苦手なので尚更だ。いくらかギリシャ神話や聖書に関する、日本語の入門書を繙いたのだが、結局、参考書に載っている範囲はカバーできず、また多少知っていても、英語でいかに表記するのか分からず、時間切れで爆死と相成った。

 なお詩の韻律規則においては、『英詩理解の基礎知識』(金星堂)が役立った。直喩や隠喩や奇想から対照法や撞着語法といった修辞法と、弱強五歩格とかシェイクスピアソネットというような形式をまとめたものだ。この辺りは一通り知識として覚えたのだが、実際に出力する機会が取れず仕舞いであった。scansionといって、実際に詩を見て韻律分析ができねばならないが、やはり覚束ないままであった。

 外国語は、第一外国語(英文和訳、和文英訳)と第二外国語(フランス語またはドイツ語)の二本立てとなっている。第二外国語はどちらも習得度としては同程度と思ったので、悩んだ末に自分はフランス語を選択したが、この対策に追われる次第となった。

 フランス語については過去に書いたので、英語について言えば、手元にあった『テーマ別英単語ACADEMIC 人文・社会科学編』(Z会)──多分『リンガメタリカ』(Z会)の大学生向けみたいな感じの本だが──を読んで、その後日本語訳を見ながら英訳する、という作業をやった。けれども結局、他分野の対策に追われ一週間足らずしかやっていない。[中級]を終えたあと[上級]に進むつもりだったが、[中級]も終わらなかった。ほぼ何もしていないも同然だ。けれども大学受験生のころ、この手の問題を得意としていたので、試験は比較的奮闘できた。

 面接に関しては直前の休み時間に、インターネットに載っていた、院試の面接で問われることというような項目に対し、解答を脳内で作っていた程度だ。自然体で挑んだ。結果、初歩的質問に答えられなかったので、落ち込みながら帰宅した。

 合否発表までは、不合格を確信してしばらく発狂し、やはり大学一、二年を成人向けゲームに空費し、三、四年は自殺のことを考えてしかいなかった僕には無謀であったのか、畜生、などと喚いたものである。落ちたら浪人するつもりであったが、実際に終えると燃え尽き気味であった。多少勉強もしていたが。

 結局合格したので良かった。配分は失敗したとも思うが、文学史における選択問題のほうと、フランス語については勉強が功を奏したと思う。誰かしらの参考になりでもすれば幸いだ。